≪米「勇気ある女性賞」に日本人 マタハラNet設立 小酒部さん≫ [現場から]
マタハラNet設立 小酒部さん
マタハラ、企業に厳しく 厚労省通達
妊娠・出産と解雇・降格、時期近いと「違法」
妊娠から育児 一貫支援
世田谷や埼玉・和光、「フィンランド式」導入広がる
こうした支援策は福祉先進国のフィンランドで「ネウボラ」と呼び、拠点整備が進んでいる。
「近くに子育てを手伝ってもらえる親族はいますか」「一時保育の制度は知っていますか」。埼玉県和光市のネウボラ拠点の一つ「わこう産前・産後ケアセンター」に今月21日訪れた女性に対し、担当者が母子手帳を手渡しながら語り掛けた。
女性が子育てへの不安を訴えると、「1人でやろうと思わず、困ったことがあったら何でも相談して」と笑顔で応じた。
和光市は昨年10月、「わこう版ネウボラ」制度を立ち上げた。市内の保育所や助産院などに窓口計4カ所を設け、保健師や助産師の資格を持つ母子保健コーディネーターらを配置している。
出産が近づいた女性には乳児の入浴法などを伝える「プレパパママ教室」を案内。出産後に乳児健診を受けない場合は、自宅を訪問して事情を聞く。親族らの支援が得られない母親には一時保育サービスなどを紹介。「一人ひとりに適した子育て支援メニューを提供している」(市保健福祉部の部長)
母子手帳を手渡す段階から様々な
支援策を紹介する(埼玉県和光市)
千葉県浦安市は2014年度から、「浦安版ネウボラ」と名付けた支援サービスに取り組む。妊娠、出産、子供の1歳の誕生日の3回に分け、ケアプランを作成する。
ケアプラン作成
初回のケアプランは昨年10月から作成を始め、今年1月末時点で323件に達した。今後、2回目のケアプラン作成時には「こんにちは赤ちゃんギフト」として、子供の肌着などを進呈。3回目は育児サービスなどを利用できる金券を無償配布する予定だ。
未就学児が年間約1000人ずつ増えている東京都世田谷区は、ネウボラを参考にした支援策を検討中だ。「『少子』ではなく『増子(ぞうし)』」(保坂展人区長)という意識で、悩みを抱える育児ママへの手助けを急ぐ。今春以降に有識者検討会で具体的な議論に入る。
陣痛タクシーで安心 緊急対応、運転手に研修
病院と連携、優先配車
「お守りのよう」
「お守りを持っているような安心感があった」。東京都台東区に住む30代の女性は、2人目の子供を産んだ約2年前を振り返る。
当時、夫と2歳の長男、義理の両親の計5人暮らし。夫と両親には仕事があった。「もし、破水した時に子供が騒いだら……」。1人で長男の面倒を見ながら病院に行けるかが不安だった。
そんな時、出産経験のある知人から聞いたのが、タクシー大手の日本交通(東京・北)が2012年5月に始めた「陣痛タクシー」だった。
利用者は事前に自宅の住所や電話番号、出産予定の病院などを登録しておく。オペレーターが24時間、365日待機し、電話を受けると近くにいるタクシーに連絡、優先的に配車する仕組みだ。事前に病院も分かっているので、黙っていても運んでくれる。
同社の営業台数は約3400台。すべての運転手が出産の基礎や車内での対応について研修を受け、朝礼時にも2週間に一度のペースで安全運転の徹底や妊婦の体調が急変した際の対応の手順を確認する。
自身も破水した女性を運んだ経験がある千住営業所(東京・足立)の辰雄班長は「安全を第一に考え、勝手な判断をしないように心がけている」と気を引き締める。
陣痛タクシーには既に2万件以上が登録され、利用数も7700件以上ある。同社によると、都内の妊婦の約2割が登録、約1割が利用した計算になる。台東区の女性の場合、配車要請は深夜2時ごろだったが、5分程度で自宅に到着。女性は「名前と病院を確認されただけ。落ち着いて出産に臨むことができた」と満足げだ。
日本交通のサービスには2万件
以上の登録があるという
核家族化や地域コミュニティーの縮小で、夫の仕事中に家で一人きりになったり、身近に頼れる人がいない妊婦は多い。少子化が進む中、女性が安心して出産できる環境整備の一環として、同様のサービスが全国各地に広まりつつある。
滋賀県の「ゆりかごタクシー」はその一つ。出産後の女性を支援するNPO法人「マイママ・セラピー」(大津市)の提案を受け、県タクシー協会が取り組む。13年10月に大津市を中心とする湖南地区で始め、1年後に彦根市など湖東地区に拡大。これまで1300人以上が登録しており、4月からサービスは県全域に広がる見通しだ。
運行に先立ち、国土交通省の出先機関や関係自治体、医師会などを交えた検討会を設置した。運行エリアや運転手の研修、登録方法など具体的な議論を進めながら、県ぐるみで取り組む意識を高めてきた。
マイママ・セラピーの津島玉枝理事は「関係機関が連携して取り組んだケースは全国でも例がないはず」と胸を張る。今後は研修の充実などに力を入れる考えだ。
自治体が補助金
静岡県藤枝市は14年度から、運転手の講習費など総事業費の半額、上限25万円を補助している。現時点での対象は「マタニティタクシー」との名称でサービスを始めた志太交通(同市)のみだが、市の担当者は「子育てしやすい街としてPRする意味でも、応募があれば支援を前向きに検討していきたい」(企画政策課)と話す。
ただ、これらのサービスはいずれも社会貢献的な側面が強いのも事実だ。タクシー会社側は収益源として位置づけているわけではなく、むしろ出産後の子供の健診や買い物、塾や習い事の送迎などへの波及に期待している。
日本交通の東條班長は「陣痛タクシーの利用を機に、リピーターとして定着してくれる顧客も少しずつ増えてきた」と手応えを話している。
妊娠中は、我が子が誕生する期待や喜びをかみしめる一方で、不安や悩みもつきもの。そんな妊婦や家族の味方になってくれる、スマートフォン(スマホ)向けアプリが、ここ数年次々登場している。(バッティー・アイシャ)
■妊娠週数に対応 妊娠期間中は時期に応じて、必要な情報は異なる。博報堂DYメディアパートナーズとNTTドコモの「妊婦手帳」では、妊娠週数に対応したおなかの中の赤ちゃんの様子や、知っておくと役立つ情報をQ&A形式で配信している。無料だが、過去記事閲覧など一部機能は有料で月額税込み200円だ。
「妊婦手帳」の利用者3225人を対象とした昨秋の調査では、「不安が軽減された」と回答した妊婦が83・3%、「週1回以上利用している」と回答した妊婦が98・8%おり、不安解消のツールとして活用されているようだ。
妊娠中の経過や、出産後の子供の成長を記録するものもある。ヤフーの無料アプリ「kazoc(カゾック)」は、妊婦の体重を記録したり、赤ちゃんのエコー写真を保存したり出来る。情報をスマホを持っている家族に限定して公開し、単身赴任中の夫や、離れて暮らす両親などと共有することが可能だ。
■出産に向けて 楽しみな反面、悩ましいのが赤ちゃんの命名。リクルーティング スタジオの「無料 赤ちゃん名づけ」は、名字を入れると画数の良い名前を表示したり、月間17万人以上が検索した日別や月間の名前ランキングを見られる。
出産予定日間近になると、陣痛が起きた時に、冷静に対応出来るかどうか不安を感じる妊婦もいる。そんな人に役立ちそうなのが、プラスアールの「陣痛きたかも」(無料)だ。陣痛が始まった時と治まった時にボタンを押して間隔を手軽に記録出来る。陣痛の間隔は出産する際の重要な情報になる。病院や両親など緊急連絡先を登録し、ワンタッチで発信する機能も付いている。
ママになった後も/
出産後に活躍するアプリもある。
子供が誕生すると予防接種が必要。原則公費負担の0歳の定期接種だけでも年に10回あり、任意予防接種も加えればそれ以上の回数が必要になる。小児科医を中心としたNPO法人「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろうの会」は「予防接種スケジューラー」(無料)を提供している。各ワクチンの内容解説のほか、接種済み・接種予定をチェックできる一覧表機能などを備えている。
センジュは、無料のお出かけ情報「comolib(コモリブ)」を配信。レジャー施設やレストランなどで、ベビーカーで入店可能か、授乳室があるか、オムツ替えのスペースがあるかなど、子育て世帯が気になる情報を掲載している。
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